編著:藤田 敏郎
序 説 |
はじめに 生体には,神経系,内分泌系,循環系などの広範な調節系があり,これらが協調して働くことによって,特有な機能を有する臓器の集合体である個体が調和のとれた一つの系として絶えず正確に作動することを可能にしている。循環系は心臓・血管からなり,血流・血圧を維持することによって,酸素や二酸化炭素,種々の代謝産物やホルモンを全身組織に運搬する役割を果たしているとともに体温調節においても重要な役割をしている。この循環系は神経性,局所性,体液性などの数多くの調節機構による巧みな調節を受けており,これによって生体は外的刺激の絶え間ない変化に対応して内部環境(milieu int屍ieur)を維持することを可能にしている。 近年の生化学や分子生物学の発展は,この心臓血管系の調節機構にかかわる数多くの生理活性物質の発見をもたらし,また従来から知られているアンジオテンシンなどの古典的な循環調節ホルモンに関しても,新たな知見が得られている。新しい循環調節因子の発見は,複雑で精巧な循環調節機構の解明に多くの手がかりを与え,またこの調節系の異常による病態発症機序およびその治療法,治療薬の開発に新しいアプローチを提供してきた。 近年の循環調節ホルモン研究の著しい進歩に日本人研究者が果たした役割は多大なものがある。心房性ナトリウム利尿ペプチド,エンドセリンなどの新しい循環調節ペプチドは日本人研究者の手によって発見され,さらにその生理的・病態生理的意義の解明の研究においてもわが国の研究者が世界をリードしてきた。そこで,本誌では循環調節ペプチド・因子の発見のサクセスストーリーを発見者ご自身に語っていただくことにした。 (後略)・・・・・・・・・ |
目 次
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標題 |
トップオーサー |
頁数 |
序説 | 藤田俊郎 | 1 | |
I | 循環調節ペプチド・因子―発見(単離・同定)経緯,構造,病態生理的意義など― | 5 | |
1 | レニン | 稲上 正 | 7 |
2 | アンジオテンシンI・II | 荒川 規矩男 | 15 |
3 | ナトリウム利尿ペプチド研究の流れをたどる | 松尾 壽之 | 21 |
4 | エンドセリン | 眞崎 知生 | 28 |
5 | NO | 戸田 昇 | 34 |
6 | アドレノメデュリンとPAMP | 寒川 賢治 | 41 |
II | 関連薬剤 ―合成研究経緯・開発動向,構造・活性相関,位置付,臨床研究など― | 55 | |
1 | レニン阻害薬,ACE阻害薬 | 日和田 邦男 | 57 |
2 | アンジオテンシンII受容体拮抗薬 基礎 | 仲 建彦 | 65 |
2 | アンジオテンシンII受容体拮抗薬 臨床 | 楽木 宏実 | 71 |
3 | NO関連薬剤 | 平橋 淳一 | 78 |
4 | ANP・BNP | 斎藤 能彦 | 86 |
5 | Neutral endopeptidase 阻害薬 | 岩本 彩雄 | 95 |
6 | エンドセリン受容体拮抗薬 | 後藤 勝年 | 103 |