医学略語辞典

監修:河合 忠




 漢字は象形文字といわれるように,一つ一つの文字が意味をもっているので,文字そのものを見てもほとんどの場合そのもつ意味を理解することができる.自分で書く場合には,面倒であっても漢字は通常一つ一つの熟語の字数が少ない利点がある.

 日進月歩の医学界では,外来語を使うことが多く,しかも日本語訳が定着する前にそのまま広く使われることが少なくない.そうした外来語は英語がほとんどであって,アルファベットで綴るとかなり長い単語になるので,英語を母国語とする国であっても略語が多く使われている.それらの略語がそのまま我が国に定着するだけではなく,それぞれの専門家が便宜的に略語を造る場合も少なくない.そうすると,欧米の医学大辞典を探しても見つからない略語がかなりの数に上り,しかも同じ略語がまったく異なった意味で使われていることも少なくない.そのうえ,回診時での医療関係者間の会話や,短時間でカルテを書き込むときなどには,英語に加えて明治以来の伝統的なドイツ語由来の略語が多く使われている.今後,医療界でも情報公開が進んでいるので,医師や医療関係者以外でもある程度の略語の知識を必要とする場合が多くなるであろう.

 こうしたニーズに応えるために,我が国の医学界の動向を忠実に反映し,広く使われている基礎医学,臨床各科にわたる略語約8,100語を厳選し,しかも手軽に利用しやすいハンディな「日本臨牀社医学略語辞典」を出版することとなった.多くの医学会から出版されている用語集や参考書から略語を抽出して編集し,参考にした書籍一覧を付録に掲載した.

 今後,本書を愛用して頂き,追加,訂正などの点について読者諸兄姉からご指摘頂きながら改訂を進め,より良い略語集に育てて頂ければ幸いである.

2001年2月
自治医科大学名誉教授
河合 忠

 


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