糖尿病略語辞典

編著:門脇 孝

  


序  文

 近年,糖尿病における分子生物学的研究の著しい進歩や,高血圧症・高脂血症・肥満などとの関連で研究領域の拡大から,糖尿病領域で使用される略語が増加し,中には難解なものも多く見られるようになって来た.

 そこで今回,糖尿病領域での略語の正しい理解の為にフルスペリング,日本語訳の他に簡潔な解説を加えて,小辞典の機能を持った本書「糖尿病略語辞典」を企画した.

 略語の選択は糖尿病学会で使われているものを中心に,その他糖尿病領域の研究・教育・啓蒙に関係する機関・学会・協会や,糖尿病領域の大規模多施設臨床試験などから収集し,その中から比較的広く認知されていると考えられる,500語余りを選択した.

 原則として略語,フルスペリング,日本語訳,解説文の順に並べ編集したが,該当するフルスペリング・日本語訳をつけられない略語では,由来・語源などを解説文に入れ理解の助けになるよう心掛けた.解説文は編著者と3人の編集協力・著者の専門分野を中心に分担し,作成した.また糖尿病との関連で選択した略語では,極力糖尿病に関する記述を入れる様に配慮した.

 略語は時代と共に淘汰され,新しいものが登場したりして変化していくものであり,時代に合わせた改訂が必要であると考えるので,お気づきの点,不備な点を是非ご指摘,ご助言をいただきたい.

 付表の1つ「ノモグラムによるBMIの測定」は編集協力・著者の1人野田光彦先生によるものであることを付記する.

 日本臨牀社の早藤弘氏からは創意ある企画に始まり,記述の綿密な検討や表記の統一,さらにはともすると遅れがちな編著者,編集協力・著者への督励など,一貫して熱意にみちた協力を得た.深く御礼申し上げる.

 本書が糖尿病の診療に携わる一般臨床医や看護婦・栄養士・薬剤師などコメディカルの方々はもとより,糖尿病専門医を目指す医師や研修医,医学生に少しでもお役に立つ事が出来れば幸いである.

2000年1月  門脇 孝

書  評 (日本臨牀2000年10月号より)

 20世紀もあと数カ月,今世紀終盤における糖尿病学の進歩,特に分子生物学,分子遺伝学的手法を用いた研究成果は目覚しくまさに隔世の感がある.これらの成果は当然最先端のテクニカルタームを生んだ.専門用語はしばしば略語となって論文に書かれ,発表に使われるようになり,研究者の間では日常茶飯のように極く普通に使われてくる.しかしその一方で,同じ糖尿病の診療に携わっている一般臨床医の方々には次から次と新しく登場する略語についてフルスペリングやその意味に困惑する事も時にあろう.

 今回糖尿病学の最先端の研究・診療に従事されておられる門脇孝先生の研究グループの方々が糖尿病に関連する略語を,ポピュラーな略語から,最先端の略語までを含めて約600語について,フルスペリング,日本語訳,そして簡潔な解説をまとめた本書の企画・編集を行われた事は時代の要請に応じたものと言って良い.専門家が論文,学会抄録を書かれる時はもとより,一般臨床医が文献を読む時,講演を聴く時に出会う略語のフルスペリング,日本語訳,解説を手軽に知り,確認する上で大変に良い書物である.

 また本書の附表に略語に関係する最新の糖尿病の分類,糖代謝異常の判定基準,糖尿病用薬一覧,糖尿病治験薬コード番号一覧,ノモグラムによるBMIの推定までが用意され,臨床医ばかりでなく糖尿病の診療に携われるコメディカルの方々や糖尿病用薬の情報活動を担当される医薬情報担当者の方々にも大変役立つよう配慮が払われている.

 今後の研究の進歩とあいまって生まれる用語,略語を追加し,更に広汎でより質の高い略語辞典としてメインテナンスされる事を望むものである.

東京大学名誉教授 小坂樹徳

  

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